|
「じゃん」 暑くなり始めた夜の日に家の前で、赤也に会った。 それはあまりに久しぶりで、そして赤也はあまりに背が伸びていて、声をかけられてもはじめはどちら様?の状態だったんだけど、 その特徴すぎる髪の毛を見て確信を持つ。慌てて「ひさしぶり、」なんて在り来たりに手を振ってしまった。 赤也は乗っていた自転車を降りて、カラカラと押してこちらに近づいてくる。 「赤也、今まで部活だったの?」 「あー。うん」 「すごいね。こんな遅くまでやってるんだ」 「まあ試合前だし。いつもはもーちょい早えよ」 そう言う彼の背中には大きな鞄。中にはいろんなものが詰まってるんだろうな。 テニスのために私立受験なんかしちゃって、立海に行ってしまった赤也。 近所に住んでるのに全然会わない赤也。いつのまにかすっかり背が伸びてしまった赤也。 でもくるんくるんとした髪の毛だけは変わらない赤也。 相変わらず鼻の下を人差し指ですすってる赤也。大好きだった赤也。 (どうしよう、かっこいい) お互い中学生になって本当に会わなくなって、あんな気持ち薄れてしまったと思っていたのに。 こうして顔を見るとどんどん胸がうるさくなっていくなんて。薄れるどころか色濃くなっていくようだ。 まだまともに目を見てないの、赤也は気を悪くしないかな。そういえばまだ怒ると目が赤くなるのかな。 「つーか、お前。どこ行くんだよ」 「コンビニだよ」 「何買うの」 「…アイス。暑いし」 なんだか気恥ずかしくなった。赤也はこんなに暗くなるまでテニスを頑張ってるってのに、 私は家でぐーたらしてて、暑くてしょうがないからアイス買いに行ってるとか、やばい暇人すぎる。 もっとマシなこと言えばよかった。予習してたらシャーペンの芯なくなったから買いに行くんだ。とか。 そしたらすっごい勉強がんばってる子みたい。そんなこと考えている時点でアホなんだけど。 でも赤也の前ではいいところ見せたいんだ。 あたしが赤也のこと頑張ってるんだかっこよくなったなあって思ったみたいに、 赤也もあたしと久しぶりに会って頑張ってるんだ可愛くなったなあ…とまではいかなくていいけど、 せめて大人っぽくなったなあとか変わったなあとか思ってほしい、なんて。 ちらりと一瞬赤也を見ると(今日初めて見れた!)ふうん、とそっけなさそうな返事をして。そして。 「乗れよ」 ぽつり、赤也が言った。え?と聞き返すと、赤也はくるりと自転車ごと背中を向けた。 「お前チビのまんまだし、暗いとこあぶねーだろ」 「な!チビって!」 「いーから乗れって」 期待はずれの言葉なはずなのに。一応形だけ怒ってはみたものの、どうやら私は相当嬉しいらしい。 だって自転車を漕ぐ赤也の背中は私の特等席。赤也は荷物を籠の中に入れて、私は 急かす赤也の後ろに遠慮がちに乗りながら、そっと赤也の制服をつまむ。胸がどんどん踊っていくのを感じていた。 「ー」 「なっ、なに」 「久しぶりにパピコ買えよ、パピコ」 うん、とここは素直にうなずいておこう。そういえば今日は、やけに星がキレイだ。 |