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「ねえ南ちゃん、南ちゃんは好きなひといないの」 「なっ、なんだよいきなり」 「いきなりじゃないです、前からずっと思ってたんです」 試験前で部活動もお休みの放課後。夏の遅すぎる夕暮れに、教室は茜色に照らされていた。 付け加えるとすると、あたしの発言によって南ちゃんの顔はそれよりももっと赤く。 おいおいこれくらいでいちいち赤面しててどーするんだ南ちゃん。目を泳がせるな。ああもう。 まあでもこっちはあんたのことなんかお見通しです。そんな反応するだろうってこともね、ぜーんぶ。 南ちゃんほど分かりやすい人はいません。 「ねえってば。いるんでしょ」 「(なんでそんなに強気なの)…まあ否定はしないけど。でもうんとも言えない」 「トボけ方も下手ねえ。ネタは上がってんのよ」 「なにそれ。どっから」 「千石」 「…あのバカ」 ごめんなさいウソです。あたしが勝手に気付いたことだけど、千石のせいにしました。 でも気付いてから千石に直接問いただして確信をもったことなので、千石のせいにもなります。 彼の名誉のためにこれも付け加えますが、最初千石は何にも喋らなかったよ。思ってたより口堅かった。 そこでですね、奴の弱み(保健室複数回目的外利用)(…)を持ってつっついたら、いとも簡単にゲロりやがりました。 あれ、むしろ評価ガタ落ち? 「…どこまで聞いたの」 「ぜーんぶだってば」 「…」 「さっさと吐いちゃっていいんだよ」 なーんて。ほんとは南ちゃんの口からちゃんと聞いてみたいだけなんだけど。 相変わらず南ちゃんはあさっての方向をむいて、いやいやこれはあさって通り越してしあさって? それくらい視線を彷徨わせて何か考えていた。目をぱちぱちしてるのがかわいい。でもあたしの顔は見てくれないんだ。 「はいホラ」 それはどうして?どうしてあたしの顔は見れないの。なにか不都合でも? やだなあ、あたしには話せないっていうの。いかにも困った顔してくれちゃって。 「…、さっきの数学わかった?なんか不安そうだったじゃん」 「南ちゃんがわかりやすーく教えてくれたから大丈夫」 「で、でもせっかく部活も休みで放課後こうして勉強できるんだしさ、続きしようよ」 「南ちゃんのおかげで明日のテストもばっちり。次は好きなひと教えて」 「…」 「はいはいホラ」 でも南ちゃんが困ってくれてるってことは全然嫌じゃないんだ。だって南ちゃんはあたしに聞かれて、 鬱陶しいとか面倒くさいなあとかそういう理由で困ってるわけじゃないでしょう。 言ってもいいのかな、もし言えばあたしがどんな反応するのかなとか一人でぐるぐる考えて困ってるんでしょう。そうなんでしょう。 ああ、更に夕陽は傾いて。茜色は藍を帯びて色を変える。ねえ、早くしないともうすぐ日が暮れちゃうよ。 「…さあ」 「はいー?」 「冗談抜きでオレの、その、話、ちゃんと聞いたの?」 「聞きましたよ」 「…驚かないの?」 「驚くっていうか、そうなればいいなーとは思っていましたので」 まあ日が暮れたとしてもあたしには特に支障はありません。 だって、遅くなってもならなくても、優しい南ちゃんはあたしをおうちまで届けてくれるでしょう? 「あたしも南ちゃんのこと好きだもん」 晴れて両想いってわかったんだから。ね。 |